梵天がくれた文字

梵字の変遷
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梵字といえば古代インド語の文字としてよく知られています。外見的には大別すると塔婆などで見かける一文字ずつの物と、カットに使ったような文字の上が横線でつながっている物とがあります。いずれも、紀元前3世紀頃のカローシュティー文字あるいはブラーフミー文字と呼ばれるところから始まります。

 

 

 

 

 

 

カットのデーヴァナーガリー文字は「ヒンディー語の世界にようこそ」を利用して制作しました。

 カローシュティー文字

カローシュティー文字はイラン系のアラム文字の影響があったといわれ、右から左に書くタイプです。この文字はインド語を表現するには不十分なところがあり、だんだんブラーフミー文字の方が広く使われるようになります。

 ブラーフミー文字

ブラーフミー文字は発音を忠実に表すことに重点が置かれ、最初からインド語の音韻に即して作られました。ブラーフミーという名前は、ブラフマン=梵天がこの文字を教えたという伝承からきています。形状は直線を主体にしたデザインで、後に曲線を用いた優雅なスタイルのグプタ文字が登場します。そしてグプタ王朝が衰退し始めると、また新しい文字が現れます。

 悉曇文字 しったんもじ

私たちになじみの深い悉曇文字は、6世紀頃にグプタ文字の元に生まれたシッダマートリカーと呼ばれる文字の流れです。

 ナーガリー文字

7世紀頃になると、横線でつなげられる独特な書き方をするナーガリー文字が登場します。ナーガリー文字は後にデーヴァナーガリー文字と呼ばれるようになり、活字などもあって現在まで使われています。左のカットの文字はホームページ上で提供されているものを利用し製作しました。内容は日本語です。ひらがなの代わりにデーヴァナーガリー文字を使用しました。デーヴァは神、ナーガリーは町・都市、という意味です。

 梵字

10世紀頃になると、グプタ文字の右側の線を垂直にして、その末端を斜め右に尾を引くように書く書体が現れます。日本の刷毛で書く梵字に似ています。日本の方が丸みをおびています。ランツァ文字とかクティラ文字と呼ばれます。ネパール系の経本によく使われている書体です。

今私たちが梵字と呼んでいる文字はたいてい悉曇文字をさしています。悉曇はシッダンというインド語の音写で、母音のようにその文字だけて発音できる文字をさします。そこから「完成したもの」あるいは「成就したもの」の意味になり、密教の成立とともに、ただの文字から仏像や独特の概念を表す文字になりました。

五十字門とか四十二字門と呼ばれる字義説では、梵字一字一字に仏教の教義を表す意味付けがされています。

読み方には、中天相承と南天相承があります。中天相承は中央インドの発音、南天相承は南インドの発音の伝統ということです。そしてさらに日本独特の慣例もあります。

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